彼の名は、星の名。

彼は、シリウスを踏みこえ、夜明けの太陽を迎えにいく。

彼の通過で、新しいサイクルが始まる。

乾きと熱砂の国には恵みの雨が、寒さと薄明の国には金の陽光が。

芽吹きと潤いの季節が到来する。

彼に会うために古い儀式や神官の助けは要らない。

何故なら彼が訪れれば人々は気づく。

新しい夜明け・季節が来た、と笑顔で祝祭を催す。

彼の名は、星の名。

荒れ地を沃野に変え、病を癒し、彼を求める誰かを救う腕を持つ……

                                

(2014年 2月11日 facebook より)

残響

 
見知らぬ森、続く空
晴れぬ雲の壁、白紙のページに閉じ込められ
 
私は、たくさんの忘れ物を
指のすきまからこぼしてきた
 
前のページに戻ってさがすのは、やめておく
風にさらわれたページが、次から次へと羽ばたく
 
お終いまでめくり終え
風は、ほころびた本を旅立った
すべてを知っているだろうに
なんの重荷も持たず
風は旅する
 
昨日の私は、今日の私ではない
明日の私は、今日の私ではない
 
子ども達は、まっさらなページを
始めから旅する
さぁまだ見ぬ物語を、さがしに出かけよう
 
エメラルドの波のゆりかご、
化石の竪琴が
閉じ込めた歌をさがしに
 
 
 
 ( ポール・ヴァレリー「海辺の墓地」の残響 )
 
       (2013/12/25)
 
 
   
  ブログ「こちら、ドワーフ・プラネット」より



始まり

時計台に時計はまだ置かれていなかった

天使をしるした若葉色のページが散乱し

七曜の羽ばたきが結晶する

虚を蹴ってつむがれる言葉の弦

四方に八方にあなたの歩む方向に

喪失はヴィジョンの果てなき影に過ぎない

未だカタチをなさぬ者

ちりあくたの中から隆起せよ

(2002.7.31発行 冊子「星の文字」より)