おとぎ話

春の羽音をきけば種をまき、
実りをいのって舞いました。
月あかりを杯の水にうかべ、
星の岸辺で機を織りました。

白珠の君の衣を縫うしじま、
わたしの眠りをさますのは
だれ?待ち人が訪れるまで
覚めないはずの夢の途中で。

三日月の船の旅人よ、
闇をわたる波の音よ。
黄金の実を手に持ち、
わたしを呼ぶ幻の人。

夢の庭深くわけいり、
知恵の枝を折りとり、
緑の苗をゆさぶって、
うつつの岸へ運ぶ人。

かえらぬ夜の名残に
あかつきの光を編み、
涙の栞をおとぎ話に
わたしはそっと
しのばせる。


(2020.5.5 Twitter より)


(参照)
オリオン – レモン水 (ginmuru-meru.com)

誰? – ぶるーまーぶる (fairy-scope.com)


雨の木

やわらかな羽音
風のころも
ときをつむぐ女神の
まいおりる糸
さざめく糸
めぐる糸
古巣にささやく
子守歌

ここにおいで

銀の灯うかべ
ゆれるクモの巣
まどろむ金の宿り木
まいおりる羽
さざめく羽
めぐる羽
ひととき満ちる
子守歌

ここにおかえり

(2020.3.30 Twitter より)


きんぽうげ、ふわふわ


おや、ようこそ。
おきゃくさまがこないんだ、
きみのほかにはだれも。

ずっとまってたよ。
もしよかったら、
いっきょく、ふえでもいかが?

きんぽうげ、ふわふわ

どこでも
おすきなおせきに
どうぞ……


(2021.3.6 Twitter より)


ひかりのしずく

ひかりの
しずく

おひさま
とじこめた
みずかがみ


(2020.3.8 Twitter より)

ひだまりを
うばうつめたい
あめにさえ
ぐんとぐんとふくらむ
きのめ はなのめ

陽だまりを
うばう冷たい
雨にさえ
ぐんとふくらむ
木の芽 花の芽


(2020.3.9 Twitter より)