残響


見知らぬ森、続く空
晴れぬ雲の壁、白紙のページに閉じ込められ
 
私は、たくさんの忘れ物を
指のすきまからこぼしてきた
 
前のページに戻ってさがすのは、やめておく
風にさらわれたページが、次から次へと羽ばたく
 
お終いまでめくり終え
風は、ほころびた本を旅立った
すべてを知っているだろうに
なんの重荷も持たず
風は旅する
 
昨日の私は、今日の私ではない
明日の私は、今日の私ではない
 
子ども達は、まっさらなページを
始めから旅する
さぁまだ見ぬ物語を、さがしに出かけよう
 
エメラルドの波のゆりかご、
化石の竪琴が
閉じ込めた歌をさがしに  
 
 
( ポール・ヴァレリー「海辺の墓地」の残響 ) 
( 2013/12/25 )
   

 ブログ「こちら、ドワーフ・プラネット」より


始まり


時計台に時計はまだ置かれていなかった
天使をしるした若葉色のページが散乱し
七曜の羽ばたきが結晶する

虚を蹴ってつむがれる言葉の弦
四方に八方にあなたの歩む方向に

喪失はヴィジョンの果てなき影に過ぎない
未だカタチをなさぬ者
ちりあくたの中から隆起せよ


(2002.7.31発行 冊子「星の文字」より)


ここから


シルクロードの旅の果ての島。
一度もその島を出ることなく
足元の一歩ずつだけみて歩く。
いまここが自分の場所だから。

ここからたどり着く先を探す。
路地裏から路地裏の小さな旅。
最初から最後までそれがいい。
そこから見える風景を忘れず
星空とおい異世界の夢をみる。

いつかどこか、の?


( 2019/12/10 )