まだ迷宮の中。
夢魔の子は朝まで旅する。
おやすみなさい、空の月。
アーサー王伝説に登場する
魔法使いマーリンは、
夢魔とウェールズの王女との子。
夢魔(インキュバス)は、
ケルトの妖精譚などにも登場する。
たとえばイエイツの詩に描かれた
幻想的な「インガス」は、
天地のはざま、月光と日光のあわいを
彷徨う野の精霊としての
魅惑的な「夢魔」の姿だろう。
夢魔の血は海洋や空の色、
輝きを帯びて透明……
というイメージに幻惑され
囚われていたけれど、
古代ギリシアでは
血や涙を緑と表現したそうだ。
ギリシアの森の精霊(パン)が
夢魔の原型にもあげられる、と。
さかのぼれば中東のエンリル、
エジプトのオシリスなど、
風(受粉を媒介)や
穀物霊の面影?
パンには森の神に加えて
牧神の性格が。
樹木の神であり
角の生えた青年神でもあった
中東のエンリルが原型だろうか。
なぜ忘れていたのだろう?
家の書棚に昔あった「フランス詩集」
ステファヌ・マラルメの長詩
「牧神の午後」「エロディアード」
の残像が……
青い血の夢魔、
孤高の金髪の姫……
儚くておぼろ、
でも鮮烈なイメージ……
源泉はあの詩だったかも。
もう一度、読み直したくなった、
今も再版されているかな?
マラルメ詩集は文庫本で持ってたっけ。
商品名:
フランス詩集−青春の詩集・外国篇8
商品基本情報:
著者/出版社:浅野 晃 編/浅野 晃 編
初版発行日:1966/06/10
サイズ:B6判
ページ数:205
ISBN/JAN:482621958X/4528189069886
バーゲンブック=新品(でも古い本?)
これ……欲しいなぁ。
このブログさんが翻訳なさっていた、すごい。
以前に読んだ詩と文体は違うけど、
この内容だった……翻訳公開に感謝申し上げます。
葦笛が奏でる、おおらかな生命賛歌。
いつか額の角に編んだ髪を巻き付けてくれる
夢の女性が現れるかな……
ひとりぼっちの牧神さんの午後。
青空文庫 公開中作品リスト:【作家】マラルメ ステファヌ (main.jp)
青空文庫のステファヌ・マラルメ。
上田敏 訳。
いま読んでみた「牧神の午後」
牧神は青い血(夢幻のような水の精)
ではなくて、
野に住む者の「天衣無縫な生命力」
を感じさせる。
むしろ、それがこの詩の良さ
だったのだろう、と
以前の朧げな印象と
ずいぶん違った感想を抱いた。
明快な文体の翻訳による印象
かもしれないけれど。
翻訳詩もいいなあ。
ステファンヌ・マラルメ Stephane Mallarme 上田敏訳 白鳥 LE VIERGE (aozora.gr.jp)
白鳥 LE VIERGE
ステファンヌ・マラルメ Stephane Mallarme
上田敏訳
勢(いきほひ)猛(たけ)き
鼓翼(はばたき)の一搏(ひとうち)に
碎(くだ)き裂くべきか、
かの無慈悲なる湖水の厚氷(あつごほり)、
飛び去りえざりける羽影(はかげ)の
透きて見ゆるその厚氷を。
なんて清冽なイメージ……
厚い氷に閉じ込められた
白鳥の羽ばたき、
その羽ばたきが氷を砕くかのよう、
閉じ込められた透明な瞬間のまま。
(2020.5.30~6.6 Twitter より)