水無月、土曜日の夜


「三匹みつけた」
「いや、二匹だろう」
「そうかもしれない」

あなたが見つけた一匹、
わたしが見つけた一匹。

黄緑に明るくともる光。
生い茂るドクダミの
白い花がぼんやり浮かぶ
堀の、真っ暗な草むらを
のぞき込んだ瞬間だけで
今年はもう満ち足りた。

ほ ほ ほたるこい

神社の気配に圧されて、
暗い参道を引き返した。
来年は五月中に探しに行く、
出来れば真夜中の乱舞に会いに。


ほたるぶくろの花咲いた



♪ ほたるぶくろの
 花咲いた
ほ ほ ほたるこい
 ちいさな提灯
   さげてこい


日本では「ほたるぶくろ」と
呼ばれるこの花の仲間は、
カンパニュラの名で北半球では
多種多様に分布しているという。

( 今年の花 ▲2025.5.29 )

昨年に公園で見かけて、
なんとなく気になっていた
”Campanula alliariifolia”
のプレートはもう無くなっていて、
今年は白いジキタリス?が咲いていた。

( 去年の花 ▼2024.6.1 )


元々ジキタリスだったのか、それとも
カンパニュラ・アリアリフォリアは
根付かず、ジキタリスだけ残ったのか。
それとも、花の盛りを逃したものの
アリアリフォリア?が咲いているのか。
はっきりとわからないままだけれど、
来年にも同じ場所に花が咲くのを
忘れず楽しみにしておくつもり。


ホタルブクロ – ぶるーまーぶる


THE STRANGER

THE STRANGER
(異界の守りびと)

HALF-HIDDEN in a graveyard,
In the blackness of a yew,
Where never living creature stirs,
Nor sunbeam pierces through,

墓地のなかば隠された場所、
とあるイチイの樹のうろの奥。
そこには生者の気配なく、
日が差し込むこともなくて、

Is a tomb, green and crooked,—
Its faded legend gone,—
With but one rain-worn cherub’s head
Of smouldering stone.

墓そのものだ、苔むして曲がり、
—その色あせた伝説は消え失せ、
—ともにあるのは
雨ざらしで くすぶる石造りの
智天使ケルビムの頭だけ。

There, when the dusk is falling,
Silence broods so deep
It seems that every wind that breathes
Blows from the field of sleep.

そこでは、夕暮れが訪れると、
静寂が もの思いにふけり
まるで息づく風はすべて
眠りの野から吹き寄せるよう。

Day breaks in heedless beauty,
Kindling each drop of dew,
But unforsaking shadow dwells
Beneath this lonely yew.

茫々とした美しい夜明けが、
朝露のしずく達に火を灯すが、
この寂しいイチイの樹の元には、
見捨てることのない影が宿る。

And, all else lost and faded,
Only this listening head
Keeps with a strange unanswering smile
Its secret with the dead.

そして、いっさいが失われ色あせ、
ただ この耳傾けている頭だけが
奇妙な黙りこくった笑みをたたえ、
死者との秘密の番をする。


( Collected poems, 1901-1918 by Walter de la Mare )
Collected poems, 1901-1918/The Stranger – Wikisource, the free online library

( 2025.5.25 拙訳 & 意訳 by fairy-scope )


下降する眼差し – ぶるーまーぶる