The Horseman
I heard a horseman
Ride over the hill;
The moon shone clear,
The night was still;
His helm was silver,
And pale was he;
And the horse he rode
was of ivory.
( Walter De La Mare “Peacock Pie” )
騎兵
お馬で山越す兵隊さん
カツ カツ カツ と乗てゆく
月夜の晩に 静かな晩に
冑は 銀色 兵隊さんの
お顔は蒼白(まっさを) 乗て居るお馬は 象牙いろ
(解釋)夕暮れの穴倉に、茂爺の姿を見付けた敏感の詩人の耳は、月夜の晩に、カツ カツ カツ と山路を乗越す馬蹄の音を聞逃しはせぬのである。夜は森閑と更けてゆく。耳を欹て、聞いてゐると、ほがらかな月光を浴びて、銀色に輝く騎士の冑、蒼白に冴える騎士の顔、象牙細工の様に浮出す駒の姿が、眼前にちらつく。此瞬間の感じを歌つたものであらう。敏感な詩人の耳に、ほのかに聞こゆる馬蹄の響が、因となって、詩人の心は、夢幻境に飛んで、月明の夜の美しい騎士の姿を、描いたものであらう。此小品は “Peacock Pie” の巻頭を飾っている。
形式から見ると此詩は、八行三十七綴で、和歌より六綴多いだけの短詩形である。用語に些の無駄がない。極めて簡潔な作品である。
helm は helmet の古語。was of ivory の was の次に made を補ひ見よ。
「英国児童詩選集 小山鬼子三 編」p.74-75 より
(文明書院 大正13年6月11日印刷 15日発行)