水無月、土曜日の夜


「三匹みつけた」
「いや、二匹だろう」
「そうかもしれない」

あなたが見つけた一匹、
わたしが見つけた一匹。

黄緑に明るくともる光。
生い茂るドクダミの
白い花がぼんやり浮かぶ
堀の、真っ暗な草むらを
のぞき込んだ瞬間だけで
今年はもう満ち足りた。

ほ ほ ほたるこい

神社の気配に圧されて、
暗い参道を引き返した。
来年は五月中に探しに行く、
出来れば真夜中の乱舞に会いに。